ふつう武術と聞くと空手や剣道などをイメージする人も多いでしょう。ですが、中には「目の前にいる敵」ではなく「いつか襲いかかってくるかもしれない敵」を想定した武術も存在します。それが居合です。稽古を通してさまざまな効果が得られるといわれていますが、まずあげられるのは姿勢のこと。居合の稽古では、仮想の敵を常に感じながらどんな状態でも体勢を崩さないための正しい型を習得していきます。型通りの動きを習得することで自然に姿勢が正され、ふだんからキレイな姿勢で生活できるようになるといったメリットがあります。
また、いつでも刀がきちんと抜けるよう、自分の体の隅々にまで神経を張り巡らせて稽古を行います。緊張感を持って動くので、集中力アップなど精神的にも強くなることができるのです。心身ともに鍛錬できることから、武術家はもちろん歴史上の有名な人物たちも日常的に居合の稽古を行っていたといわれています。そのうちの1人が福沢諭吉。学問のイメージが強いかもしれませんが、中津藩士の嫡男という生まれも関係し、幼いころから剣術や居合の稽古に励んでいたそうです。慶応義塾の立ち上げ後も毎日の勉強とともに欠かさず居合を行っていたといわれています。
居合には多数の流派がありますが、相手と戦う前に勝負をつけるという精神性の修業を最終目的としているのが無外流の居合。江戸時代に辻月丹が興した無外流には数多くの弟子がおり、姫路藩と土佐藩を中心に伝承されました。1度は自鏡流6代の山川能豪で途絶えてしまったものの、無外流の伝承者が自鏡流の居合を継承し、今は無外流居合として広く知られています。無外流居合の大きな特徴ともいえるのが、整備された稽古環境。都内だけでも100近く、関東全域を含めれば100以上という圧倒的な数です。家の近所や職場の近く、通勤や通学の途中など毎日どこかで稽古が行なわれているという環境なので、1度始めたら長続きしやすいでしょう。
居合は武術でありながら、激しくぶつかりあうことがありません。仮想敵を想定した1人での稽古なので、自分のスキルに合ったスピードで稽古することができます。老若男女を問わず誰でも始めやすいので、まずは見学に行ってみてはいかがでしょうか。
« iPhoneの現状。行事は一生懸命取り組むべし。 »